「競争」という概念とどう付き合えば良いのか。
最近、改めて考えているテーマ。時間が取れたので一度棚卸ししてみる。
考えるきっかけ
前職をやめたタイミングでよくないと考えたことだったつもりなのに、新しいことを始めるとすぐに「もっと速く、上に行きたい」と思ってしまう。こんな情勢なのもあり家にいる時間が長いので、セカセカしていると家でペースを崩されることに対してすぐイライラしてしまうことがありよくないなあと思うように。「何か根本的に考え方を修正せねば」と改めて考え始めた時にテーマとして出てきたのが「競争」。
競争とは何か
特定のコミュニティの中で、勝つこと、負けないことを目指すことを総称して競争というと思う。ピーターティールに言わせれば「競争とは敗者のもの」みたいな皮肉な表現をしているが。
考えてみれば、ほとんどの人は競争に晒されているんだと思う。いわゆるわかりやすい出世競争のようなものもあれば、意識高い系の転職、資金調達額競争。もっと一般的なことでいえば、事務仕事みたいな戦いとは無縁そうな人も話を聞く限りどんなスペックの人と結婚するかという戦いを繰り広げているし、結婚したらしたで子供をどこの学校に行かせるなどの戦いが始まると。
ただ特に、ある程度の学歴や職歴を手にした人はそれまで勝ってきた自負が強い分、競争に勝つことと自分自身のアイデンティティを同一視してしまい沼にハマる傾向があると思う。
安易な競争の何がだめなのか
良くないんだろうなと思う理由
- 土台そのものを作るのではなく、すでにある土台を使って改善することに注力する(そのほうが結果に繋がりやすい)
- すぐ手先のハック術に走る。簡単にできた気になる技術に走る(10時間で分かる〜みたいなビジネス書がいかに多いか。最近1分で分かる、みたいなのも見た。。)
- 土台から作らないので、似たようなレベル感の中で些細な順位の違いのためにめっちゃ頑張らないといけない。余計な仕事が増える
- 必死に頑張る割に、得られるリターンが対して変わらない、旨味が少ない(競争に負けなかったという称号は得られる)
- 人生の貴重な資源である時間がなくなる。技術の刷新や、プライベートの時間、心身を休める時間を取れない
- 結果的に長期的に戦えない。20代は気合いで行けても30~40代でリアルに身体を壊す人が出てくる。(これはほんと、笑えないやつ)
- 結果的に業界があんまり良くならない。潰し合いみたいなことになるのでお互い疲弊する。
- 結果的に本人があんまり幸せにならない。なんかいつも飢えを感じている。(はたから見れば競争に勝っているとしても、というのがポイント)
- 他者の評価軸で生きているという自覚がないまま時間を過ごし、後になって「こうすればよかった」と後悔する(多くの人は「正直に生きればよかった」「家族との時間をとればよかった」と後悔するというのは有名な話)
自分の場合
学生の時に出世競争みたいな世界は合わないなと思って大企業ではなくメガベンチャーに就職。そこでは表彰、転職先の争いが強く、事業作りにコミットしたいとスタートアップへ。が、その中でもスタートアップ村のような全体的な文化があり、結局構造は似通っていて競争を抜けられていないんだなと気づき始める。
が、前置きのように、心機一転新しいことを始めたつもりなのにまた競争の沼に片足突っ込みそうになっており、「ああ、根本的に競争というものの捉え方をかえないとダメなんだな」とやっと最近ようやく重要性を認識する。思い返してみれば目先の競争に囚われている時期はバタバタしているからある種ハイになって感覚が麻痺しているけど幸福というよりはミスしないように、、と疲れが溜まっていたなと思う。
競争を避けるための方針
ではどうしていくのかというと「狭き門より入れ」ということ。
「10年以上の単位で興味を持ち続けられる分野に対して、学術的・体系的に学ぶことから段階的に時間を集中投下する。その上で時流が来た時に勝負の打席に立てるようにしておく」ってのが今のところの良い付き合い方な気がしている。
理由は以下から。
- とにかく異質であること、人との違いがある状況を作らないといけない
- 明らかに違う軸でないと偏差値80だろうと誤差。競争下において、プレイヤーの利益は徐々になくなる。
- 専門性のないゼネラリストに明確に優位な価値はない。まず何らかの分野でスペシャリストになる必要がある
- ど正面から勝ち続けられない時は戦う場所、戦い方、戦うタイミングをずらす必要がある
- 薄くしか興味のないことは長期間、コンディションややる気に左右されずに熱量高く継続することができない
- 周囲の評価軸、流行りに変に感化されずに、自分の時間を生きる必要がある
- 将来的にいつどのタイミングで何がはやるかは予測できない(ただし、今流行っていることはおそらく廃れる)
やらないこと
今後はこういうことを気にして時間や頭のカロリーを使わない。
- 学生時代の友人との競い合いに乗ること
- 親の期待を変に気にすること
- 流行りの言葉を追いかけること、その類のビジネス書などを無駄に読むこと
- 意義を感じないこと、一般的な作法に乗っ取ってやりたくないことをやること
- 長期的に戦えない無理やりな方法を選択すること(長時間労働、短期記憶など)
具体的にいつも問い直したいこと
この手の考え方の矯正は、「意識する」と言っても変わるものではないので、毎日見返して少しずつ思考の筋肉を鍛えていく方法が合っている気がする。
- 10年かけて取り組むほど圧倒的に興味の強い領域、テーマなのか
- やりたいこと、意義のあることだけに時間を使えているか
- 多くの人が群がっていることに安易に飛びついていないか
- 教養(専門的なことを勉強するための基礎。英語や数学など)の勉強をおろそかにしていないか
- コンディションが良い状態を継続できているか、新規の学習のための時間を確保できているか
- 競争のための競争になっていないか。結果的に幸福な生活になっているのか
- 適度に人に会って、話をすることができているか。違う視点から刺激を与え、もらっているか
今後の勉強方針
- 情報系の勉強をしている時が一番時間を忘れられるので、その感覚は大事にしたい。
- 変わらずCSの基礎を着々と進める。流行りのWebアプリの勉強とかに安易に走らない。
- 安く質の高いため、moocsを勉強方法としてフル活用する。あんまり日本で使っている人はいないが、問題なし。
- 今やっているのは学部1~2年の基礎分野のため、応用領域に入り枝分かれするタイミングで方向性を見極めていく。
参考
とんでもなく面白いヤフー安宅さんの講座映像。分析そのものに興味がなくても、考え方を知るだけでも気持ちがスッキリする。「誤差」「爆死」みたいなキャッチーな表現から、ああ、適当じゃダメだなあといつも思わされる。

- 作者:ピーター・ティール,ブレイク・マスターズ
- 発売日: 2014/09/25
- メディア: Kindle版
ピーターティール自身が、根っからの変人ではなく最初はいわゆる競争の世界にいたというのが、参考にしたくなるポイント
バイアスを壊さないと、新しいものは生まれない、ということを構造的に説明してくれている珍しい本。既存のものを改善する手法は巷に溢れているけど、コンセプト段階を説明したものはなかなかないんじゃないかなと。

- 作者:井上雄彦
- 発売日: 2014/07/17
- メディア: コミック
武蔵の背中に出てくる鬼(競争心の表現としての)の表現の説得力。。マンガは感情を伝えるのに非常に良い媒体だなと思う。
いくつか記事を拝見して、「個人としてのアイデンティティを立てる」ことを大事にされている方。こうありたいと思う。